サックスのアンブシュアーにおける重要なポイントにシンリップとファットリップがあります。簡単に言うとシンリップとは下唇を巻き込み、ファットリップはあまり巻き込まない方式です。何となく逆のような気がしますが、外から見たときに唇が薄く見えるのがシンリップ、厚く見えるのがファットリップということになります。
一般には、シンリップはクラシック向けのアンブシュアーで音程・音質が安定する。ファットリップはジャズ向けで豪快な音がするがコントロールが困難と言われています。どのプレイヤーがシンリップあるいはファットリップなのかという話ですが、元々唇が厚い人も薄い人もいますし、たまたまくわえなおした瞬間が写真になってたりすることもあるので、写真では判定しにくいです。
それでも、確実にシンリップと言えるのはジョンコルトレーンでしょう。たとえば、前々回のエントリーの写真を見るとわかりますが、元々唇が厚いことを考えるとかなり下唇を巻き込んでいます。コルトレーンのワンアンドオンリーとも言えるダークな音色の要因のひとつがシンリップにあるのではと思います。他にも、ウォーンマーシュ、スタンゲッツなどがシンリップと言われています。シンリップ方式の音色の傾向がわかるかと思います。
ジャズテナー奏者の多数派はファットリップです。たとえば、マイケルブレッカーですが、

この写真を見るとほとんど下唇を巻き込んでません。スティーブグロスマンも少なくともロリンズ系になってからはかなりのファットリップに見えます(初期はどんな感じだったのか興味があります)。
さてσ(^_^)はというとクラシックのクラリネットから始めたこともあり、シンリップになりがちな癖がありましたが、ジャズやり出してかなり初期にファットリップに矯正してもらいました(たぶん、大友義男さんにだったと思いますが忘れちゃいました。)
で、最近はさらにファットリップを推進しようと意識的にやっています。イメージとしてはいかりや長介のように下唇を突き出すくらいのつもりで吹いています。こうすると口の中でのリードの振動がほとんど抑制されなくなるのでますます鳴りが良くなってきます(ただし、コントロールはますます難しくなる)。また、極端なファットリップで吹くもうひとつのメリットとして、下の歯とリードの間にはさまる唇の肉が非常に薄くなるので、下の歯で噛もうと思っても痛くて噛めなくなるという点があると思います。結果的に非常にルースなアンブシュアで吹かざるを得なくなりますが、喉でちゃんとコントロールすれば無問題です。深くわえ+超ファットリップで自分の求める音にかなり近づいてきた気がします。もちろん、人によって口の形も求める音も違うのでこのやり方が万能というわけではないですが、サックス経験が長い方も短い方もいろいろトライしてみてはいかがでしょうか?
どころで、米国のサックスサイトSax on the Webの掲示板で"thin lip"、"fat lip"をキーワードで検索しても全然情報が出てきません(文字通り「唇が薄い・厚い」の情報しか出てきません)。どうもこの言い方は日本独自のようです。
トレーンに会った人の又聞きなんですが、トレーンは歯周病が酷く、前歯がかなり抜け落ちていたらしい。そうなると押さえが利かないのでダブルリップにならざるを得ないのではないかと。写真を見ると上唇を巻き込んでいるようにも見えます。
個人的には前歯の先がとんがっていていたいのと楽器が安定しないのでダブルリップはあきらめています。