以前の記事に書いたマウスピース職人のフィルバロン氏ですが、自らもサックス奏者であり、米国のサックスコミュニティサイトSax On The Webのフォーラムにも定期的に投稿しています。自分と意見の違う人をバカ呼ばわりするなどちょっと人格的に問題がある感じがしますが、言っていることには正しいことが多そうな気がします(もちろん、彼の言ってることがすべて正しいわけではないですし、サックスの奏法は人それぞれの部分もあるのである人にとっては最適なやり方が別の人にとってはそうでないこともあるでしょう)。
フォーラムにおけるフィルバロン氏の主張のひとつに「マウスピースはいくら深くくわえてもくわえ過ぎということはない」というのがあります。いくらなんでもそれはないと思うのですが、多くのサックス奏者がマウスピースを浅くくわえすぎであり、もっと深くくわえることで音質が飛躍的に向上するという説には注目すべきものがあります。
一般にサックスのマウスピースをくわえるポイントはリードがマウスピースから離れ始める場所の上下に歯が来るのが標準と言われています。要するにバイトプレートの真ん中あたりです。浅くくわえてもすごい音を出している人もいる(たとえば、ルータバキン)ので、絶対ではないですがまあこの辺が標準でしょう。私もバイトプレートの真ん中か、そこからちょっと浅めのあたりをくわえるように練習してきました。
しかし、フィルバロン氏はそのポイントよりももっと深くくわえろと言っています。同氏はいろいろな有名プレーヤー向けにマウスピースを作ったり調整したりしているので多くのプレイヤーのくわえ方を見ているはずですが、マイケルブレッカーもソニーロリンズもめちゃくちゃ深くくわえているらしいです。ロリンズは上の歯がバイトプレートをはみ出してマウスピース本体の金属のところに行くまで深くくわえているそうです。ホントですかねー?
前回のエントリーのコメントでhandoさんがYouTubeのアーチーシェップの動画を紹介していますが、この動画でもシェップはめちゃくちゃ深くくわえてほとんどリガチャーのところまで届いてる感じです(ただ、この動画でのシェップの音がメインストリームジャズとしての良い音かどうかは議論の余地がありますが)。
自分で実際やってみると非常に違和感がありますし、下唇でリードがコントロールできないので常に「ブギャー」みたいな音になってしまいます。初心者で全然アンブシュアーが出来てない人が何も考えないで乱暴に吹いている感じです。しかし、ちょっと練習していると唇のコントロールが利かない分、喉で微妙なコントロールがしやすくなるのがわかります。慣れてくるとビブラート(コルトレーン以降のモダンなビブラート)もかけやすくなります。そういえば、コルトレーンの演奏ビデオを見てもかなり深くくわえているように見えます(ただし、唇が厚いので実際どこまでくわえてるかは不明)。フラジオは出しにくくなりますが、出るとコルトレーン系の割れた味のあるフラジオが出ます。また、多くのサックス奏者が持っている悪い癖である高音域でリードを強くかんでしまうという問題が解決されます(ここまで深くくわえているとリードのかみようがありません)。結果的に高音サイドキーの音が太くなります。ただ、低音域で音がひっくり返りがちになりますし、深いサブトーンも難しくなります。以前アップしたガーデラMBIIで吹いた動画はこのやり方を始めた直後のものなので、いまいちコントロールができていません。
いずれにせよ、この「メチャ深くわえ奏法」は練習してみる価値があるぞと思いましたので、しばらく続けてみることにしました。この過程で編み出したσ(^^)独自の方法がマウスピースパッチ重ね貼りです。ジャーン。

通常のマウスピースパッチを貼った上に、さらにマウスピースパッチを半分に切ったものを2枚重ねてマウスピース先端から遠い方に貼ります(重ねて貼る方は瞬間接着剤で貼らないとすぐはがれてしまいます)。こうすることで、深くくわえる時の歯の位置のガイドにできます(これがないと長年の習性ですぐに浅くくわえる形に戻ってしまいますので)。
この方式のもう一つのメリットとしてパッチが厚く(通常の3倍)なるので強制的に口が大きく開かれることになり、響きがよくなる可能性があるということがあります。口の中の容積を大きくすることで響きを良くするためのテクニックとしてダブルリップ(上の歯も唇を巻き込んで歯とマウスピースが直接触れないようにする奏法)がありますが、実際には楽器の保持が安定しなくて難しいです。実際、ダブルリップは良いと言われているわりにはやっているプレイヤーは少ないですね。このパッチ重ね貼りにより、楽器の安定性を損なわずにダブルリップと近い効果が得られるのではと思います。
某ジャムセッションにこのセッティングで行きました。録音を聞くと音は太くなった気がしますが、フレージングは慣れてないせいでますます素人ぽくなってしまいましたね(^_^; ちょっとここで公開できるレベルではありません(^_^; まあしばらくこれで練習して様子を見てみようと思います。
次回はこれに関連してフィルバロン氏が提唱する喉のコントロールの練習方法についてご紹介します。
posted by kurikiyo at 12:03|
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